あとがき


 はじめまして、あるいはお久しぶりです。折葉坂三番地の銅折葉と申します。
 このたびはお手に取っていただきありがとうございます。

 この本「悲しきかなや身は籠鳥」は、封獣ぬえのラストスペル、恨弓「源三位頼政の弓」をキーワードに、平安時代末期のぬえと、摂津源氏棟梁である源(みなもとの)頼(より)政(まさ)の出会い、そして別れを描いた、当サークル33冊目のSS本にして、5冊目のオフセット本になります。
 博麗神社例大祭10での頒布からの多くの方からご好評をいただき、このたび再版のはこびとなりました。
 東方projectの二次創作と言うにはいささか時代を外れ、頼政の生涯をつづる歴史大河ロマン的な内容となりました。封獣ぬえというキャラクターを構成する妖怪・鵺や、源頼政の弓についての伝承を掘り下げてみたかったという想いから生まれたお話です。
 正直なところ、やたら分厚い上に舞台も時代も幻想郷を遠く離れてしまい、非常にとっつき辛い題材となってしまったと思いますが、どうか、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
 さて、このような形態のあとがきということもありまして、紙幅の制限がないのをいいことに、この本が出来た経緯を少し。
 そもそもの発端は、平成二十五年の例大祭で頒布した妖夢VSぬえの本において、『何故、ぬえは自分を射殺した、憎き源三位頼政の弓なるものを自分のラストスペルに持ってきているのだろうか』という疑問が湧いたことに始まります。
 星蓮船のセリフにおいて、かつて伝承にある妖怪鵺の正体があの少女の姿であったということ、源頼政の鵺退治の伝承を調べていくうちに、彼女と頼政の間には浅からぬ因縁があったのではないかと思い至りました。

 おりはさんの鵺についての発言
 Togetterまとめ http://togetter.com/li/388343

 そのときの着想はこちらにまとめて頂いています。
 この時点では本の形にするかは決めていなかったのですが、以後の作品にもぬえを何度となく登場させる中で、やはり自分の中にあるぬえと頼政の物語を形にしたいという思いが強くなり、頒布へと至りました。
 このお話を書くに当たり、多くの素晴らしい作品に感銘を受けるとともに、物語のキーとなる着想を得ております。
 先のまとめ中でも述べていますが、ぬえと木ノ下に関する発想はとある方のツイートが元になります。もう元のツイートは消されてしまっているようなのですが、あのツイートがなければこのお話は生まれていなかったかもしれません。
 また、ぬえが歌詠みとして優秀であり、頼政の代作をしたというシチュエーションはニコニコ動画で東方・歴戦系の動画を投稿されている淡島ヒルコ様に影響を受けたものです。
 そして、再版にあたりましては、同じ東方×歴史小説であります「山燃ゆる 陸奥話記覚異聞録」、また「木ノ花、疾風に咲く」の諸設定、描写に大きく影響を受けております。
 頼政がぬえに送った「ぬえどりの 片恋ひこがす…」の歌に関しては、「福音ラヂヲ」でお声をかけて頂いたことから生まれました。
 どれもこの本の初版をきっかけにしたご縁によるものです。
 本当にありがとうございます。

 本作の執筆にあたり、木戸様には本文に勝る素晴らしい表紙イラストを描いて頂きました。このたび再版にもご快諾いただけたことも含めまして、心より感謝いたします。
 また、今回の再版にあたり、辻堂基信様に査読をお願いいたしました。いつも誤字等でご迷惑をおかけしております。
 再版に際して行われた一部描写の変更、設定の追加などについては、ホプレス様、enclosed0様、青矢鴉様、春日傘様、にいな様、挟まり人様、高坂流様、他、多くの方々のご協力によるものです。
 なにからなにまで大変お世話になりました。


 それでは、また次の機会にお会いできることを願って。